黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う

私が目を逸らしたのを合図のように、メイドの少女は素早い動作で鏡を下げた。


そのとき、こんこん、と扉から今日2回目の音が鳴る。

こちらの反応を待たずにがちゃ、と音を立てて、少女と同じデザインの服を着た小太りの女性が部屋に入ってきた。

それを見て、少女が慌てて姿勢を正す。

その姿をちらりと見て、女性は冷たく声を発した。

「アナ。いつまで姫様の御支度のお手伝いをしているつもりなの?」

アナと呼ばれた少女は、びくっと肩を上げ、すみません、と聞こえるかどうかも怪しいほど小さな声で謝った。

「・・・もういいから、あとは私に任せて行きなさい。
全く、時間に間に合わないでしょう。この鈍間。」

辛辣なその言葉に、アナはもう1度、すみません、と呟いて、扉の前で深く一礼して逃げる様に出て行った。

その背中をため息とともに見送った女性は私の方を振り返った。

「申し訳ございません、姫様。お見苦しいところを。」

そう目礼する彼女に、私は微かに首を降った。

この女性は、確か・・・リーンと呼ばれていたか。

数日交代で来る他の少女たちと違い、リーンは毎日この部屋に来る。

少女たちの反応を見るに、恐らくメイド長なのだろうと思われた。
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