黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
襲った寒気に私は思わず腕を数度擦った。
嘘だ。あいつは、何かを絶対に知っている。
何かはわからないけれど、私に関係する、そして国にも大きく影響する、何か重大なものを。
そうだと考えれば国王のあの態度も納得がいく。それに、私に向けた視線も。
あの視線は、何を示しているのか。
そんな私の思考を遮るようにダイアンが声を上げる。
「まあ、そういうことです。今日はこのくらいで良いのではないですか、何もわからないのですから。あとは、当日ということで」
顔を紙のように白くしたオルカイトルムネは黙り込むだけで反応しない。
それを見た兄様が腰を折ったので、私も慌ててドレスの裾を摘んだ。
「・・・それでは、失礼致します」
*
こつり、こつり、と靴の音が変わらず眩しい廊下に響く。
シャンデリアに照らされた目に痛い赤絨毯を歩きながら、兄様がはっきりと困惑した声で話しかけてきた。
「・・・僕はアムリィの結婚を防ぐために行ったつもりだったんだけど、どうやら杞憂みたいだね・・・?」
私は頷くべきか首を振るべきか反応に迷って、結局微妙に首を傾ける。
結婚については確かに杞憂だったと言えるべき内容だったかもしれないけれど、それ以上に何か深刻なものの気配を感じたからだ。
兄様は何かがおかしいとは思っているものの、それが何なのかはよくわかっていなさそうな様子だ。