黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
・・・危なかった。
どうやら、自分で思っている以上に動揺しているみたいだ。
あんな言葉くらいで。私は、もっと強くなければいけないのに。
*
「じゃあ、アムリィ。次に会うのは成人式かな・・・気を落とさないで、ね?」
そう言って気遣うように何度も振り返る兄様に頷く。
その姿が見えなくなった後、やっと私は部屋に入った。
そのまま動くこともなく立ち尽くす。
照明も満足にない、薄暗い部屋。
薄闇は、私にとって心地良い。
視界が狭まって、頭がぼんやりして、何も考えなくて良くなるから。
でも・・・駄目。
窓の外から、きぃん、という金属が擦れ合うような小さな音がする。
ドアを背にして目を閉じていた私はゆっくりと目を開けた。
「・・・何の音?」
そろり、とおぼつかない足どりで斜めに光の射し込む窓に近づく。
ここから外を覗こうと思うなんて、初めてだった。
よく考えたら、私が外の音に興味を持つこと自体が初めてだったのかもしれない。
今日は、そうでもしないと、気が紛れそうになかった。
ひんやりと冷たい金属の柵にそっと手を添える。
不必要に塔の高いところにあつらえられた私の部屋からは、王都中が見渡せそうなほどずっと遠くまで見えた。