黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う

・・・危なかった。

どうやら、自分で思っている以上に動揺しているみたいだ。

あんな言葉くらいで。私は、もっと強くなければいけないのに。



「じゃあ、アムリィ。次に会うのは成人式かな・・・気を落とさないで、ね?」

そう言って気遣うように何度も振り返る兄様に頷く。

その姿が見えなくなった後、やっと私は部屋に入った。

そのまま動くこともなく立ち尽くす。

照明も満足にない、薄暗い部屋。

薄闇は、私にとって心地良い。

視界が狭まって、頭がぼんやりして、何も考えなくて良くなるから。

でも・・・駄目。


窓の外から、きぃん、という金属が擦れ合うような小さな音がする。

ドアを背にして目を閉じていた私はゆっくりと目を開けた。

「・・・何の音?」

そろり、とおぼつかない足どりで斜めに光の射し込む窓に近づく。

ここから外を覗こうと思うなんて、初めてだった。

よく考えたら、私が外の音に興味を持つこと自体が初めてだったのかもしれない。

今日は、そうでもしないと、気が紛れそうになかった。


ひんやりと冷たい金属の柵にそっと手を添える。

不必要に塔の高いところにあつらえられた私の部屋からは、王都中が見渡せそうなほどずっと遠くまで見えた。

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