黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う

私は思考を断ち切るように意識して大きく頭を振った。

こういうことを考えなくていいように、外を眺めているのに。

ため息を小さく吐き、はたと気がついた。

「そうだ、あの音は・・・」

音が聞こえたくらいだから、きっと城内だ。

視線を下に傾け、ぐるりと見渡す。

「ん、あれ、かな」

視界左前方。見えたのは演習用の闘技場“アリーナ”だ。

あそこでは日に一度、軍の人たちが対人実践訓練をするのだ、と兄様に聞いたことがある。

私が聞いたのはおそらく、剣と剣がぶつかり合うときに起こった金属音だったのだろう。

「アリーナ、かぁ」

表情までは見えないものの、遠目にも彼らはとても活き活きして見えた。

あんな風に思いっきり身体を動かせたらどんな気分なのだろう。

あんな風にお互いに笑い合えたら、どんな気持ちになるのだろう・・・

くわぁん、と空を突き抜けるような鐘の音がする。

羨望に目を細める私の視線の先で、どうやら試合が始まったようだった。


2人の少年が、狭い円形の闘技場の中で幾度と無くぶつかり合い、その度に小気味好い音が微かに私の耳に届く。

片方の少年が優勢のようだ。

ひらりひらりと蝶さながらの身のこなしで相手をかわし、自分は余裕を持って攻撃の手を出す。その合間にBoostも使っているのだろう、彼の足元からは度々光が巻き起こっていた。

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