黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う

彼女は頭に被せることはせず、私にヴェールを差し出した。

困惑を隠しながら、私は黙って受け取る。

自分で被らせてやろうという優しさなのか、それとも目の見えなくなった私を自分が手を引いて歩きたくないからなのか、判断に苦しむ。

「もうすぐお時間です。行きましょうか」

そう言ってドアを開ける彼女に、私は幾度かリーンとヴェールを目で行き来した後、とりあえずそれを左手で胸に抱えて従った。



人々の喧騒と熱気が伝わってくる。

バルコニーに近づくと普段接しない沢山の音が私の鼓膜を震わせて頭が歪むような鈍い痛みを感じた。

「あ、アムリィ。待っていたよ。」

兄様が靴を軽快に鳴らし駆け寄ってくる。

リーンはその姿を認め、私たち2人に礼をするとゆっくりと去って行った。

いつもは走るように去っていくのに・・・最後だから、かな。私はその背を目で追う。


兄様がにこりと微笑みかけてきた。

「綺麗だね。良く似合ってるよ」

・・・喜ぶべきなのだろうか。この白いドレスが、似合っている、とは。

私が顔を微妙に歪めたのに気がついたのか、兄様は慌てたように話を逸らした。

「それにしても、凄い熱気だね。アムリィの成人式なのに、これじゃ何を祝っているのかわかったものではないよね」

そんなものだ。彼らはこんな風にお祭り騒ぎできるのなら、それが何のためのものかなんて、大きな問題ではないのだから。

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