黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
「―――それでは、アムリネシアスムリィ・ラ・セルティカ様のご登場です。皆様、盛大な拍手を!」
自分の名前が急に耳に飛び込んできて肩をそびやかしてしまう。
煽るような言葉に、わあああっ、と盛り上がるバルコニーの下。耳を叩く拍手と、大きな歓声。
行かなくちゃ。何も知らない・・・私の、国民たちが待っている。
「行く前に」
「?」
すでに足を踏み出していた私は兄様の声に振り返る。
兄様は礼服の内側におもむろに手を入れると、1粒の種を出して手のひらにのせた。
それから、口を開く。
『私は貴方を助けたい
固く心閉ざさず太陽に向かい輝け』
一瞬で目が眩むような光に包まれて、至近距離に立っていた私は堪らず目を細める。
小麦色の優しい光に包まれて、種は、ぐんぐん伸び、花の形をかたどっていって―――
「時間が無いから簡易唄で失礼するよ。
・・・これを僕から、君に贈ろう。」
それを、兄様は私の左耳の上辺りにそっと差し込んだ。
触れてみる。やはり、何かの花だ。
なんで、私に。
ばっと顔を上げると、兄様は照れたように頬をかいて眉を下げていた。
「こういうのはやっぱりなんだか、照れ臭いものだね・・・行こうか」
兄様がそう言って、私に向かって笑って腕を差し出す。
私は1度だけぎゅっとヴェールを握りしめた後、それを被った。
腕に、そっと手をのせると、兄様は歩き出した。
何も見えない私は、ただそれに従う。