だから、お前はほっとけねぇんだよ
「……てんちゃんの、気持ち?」
そう言った瞬間、ぶわっと生温い風が二人をすり抜けた。
あたしはとっさに、風に乗って流れていく髪を押さえる。
「姫瑚のことが……好きだって気持ち」
そう言ったてんちゃんの顔はあまりにも穏やかで、あたしは思わず息を呑んだ。
「……姫瑚、気付いてなかっただろ?」
「そりゃ……」
『当たり前でしょ』と、言おうとしたがあたしは口をつぐんだ。
……本当は気付かない“ふり”をしていたのかもしれない。
今まで何回もてんちゃんがあたしを好きなんだって、人から聞かされてきた。
あたし自身、そうなのかもって心の隅っこで思っていた。
……でも今も昔も、あたしはてんちゃんの気持ちには応えられない。
それで自分自身、気付かぬふりをしてたんだと思う。
でも、今回は“ふり”なんてできない。
てんちゃんはすごい勇気振り絞ってあたしに言ってくれた。
……その勇気にあたしは応えなきゃいけないんだ。
「あ、あたしね……?」