だから、お前はほっとけねぇんだよ

やっべ、可愛い。


思わずニヤケそうになった口元を、俺は慌てて抑える。

するとふいに、ヒメが顔を上げた。



「……琥侑?」


「っな、なんだよ!?」



俺がそう言うと、ヒメはばつが悪そうな顔をした。



「何か……疑ったりしてごめんね?」


「あ、あぁ……もう良いよ。そんな事」


「でも……」



また眉を垂らしてメソメソするヒメ。



……何だかこの調子じゃ、またさっきの繰り返しになりそうだ。


直感的にそう思った俺は、とっさにヒメの唇に人差し指を当てた。

するとヒメは驚いたような表情を見せる。



「黙って」



そう言って人差し指を離すと同時に、ヒメへと顔を近づける。


そしてそっと、ヒメの唇にキスを落とした。




「な、ななななに急に……」



吃音がやたら激しい、顔を真っ赤に染めたヒメ。



「……別に?」



そんなヒメに、俺は口角だけ上げて笑った。





……時折吹く風は少し涼しい。

もうすぐ、秋が来る。



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