だから、お前はほっとけねぇんだよ
あたしがかすれた声で呼ぶと、クルッっと振り返りいつもの笑顔を見せた。
あの、八重歯が見える無邪気な笑顔。
「ん?どうしたの?」
思わず見とれてしまっていたあたしは、その声でハッと我に返る。
「あ、あのっ‼ありがと!」
「いえいえ、どーいたしまして」
そう言ってまた笑ったなっちゃんにドキン、と今までに無い緊張が現れた。
怖かったから?
まだ首が痛いから?
手を握ることに慣れないから?
それとも……
そんなことを考えていると握られていた右手が解放された。
「ぁ……」
「じゃあねヒメちゃん‼気を付けてね」
去って行くなっちゃん。
その背中から目が離せない。
今にも足が崩れそう。
ずっと手を握れたらよかったのに……
彼の余韻が右手の中から逃げないよう、ギュッと力を込めた。
「どうしよ……」
あたし、なっちゃんのこと……
好きになっちゃった、みたいです……。
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