だから、お前はほっとけねぇんだよ
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「……なんでお前が居るんだよ」
がやがやと賑わう店内の中、ぽつり、そんな声が小さく響いた。
「何って……
バイト?」
レジをはさんで目の前にいる、軽く放心状態の彼にあたしは満面の笑みで答えた。
「バイト?じゃねーよ‼‼何でまたウチでバイトしてんだよ‼」
そう、ここは彼……琥侑の家、『La chérie(ラ・シェリエ)』。
この間の電話相手は琥侑のお母さん、理英子さんで、あたしはまたココで働かせてくれるよう頼んだのだ。
そして理英子さんは快くOKして下さり、あたしは電話した次の日……つまり今日から出勤している。
「つーかババァ、聞いてねぇんだけど」
「だって言ってないんだもん。知ってるわけないじゃん」
ペロッと舌を出してお茶目に笑う理英子さんに、「うぜぇ」と毒を吐く琥侑。
「ヒメも、来るなら来るって言えよ」
「だって……琥侑言ったら絶対反対するでしょ?」
あたしがしょげて言うと、琥侑は戸惑ったような表情を見せる。
「いや……別に反対は……しないけど」
「琥侑はヒメちゃんが来てくれた方が嬉しいもんね」
ニコニコとそう言った理英子さんに、琥侑はすぐさま視線を移す。