だから、お前はほっとけねぇんだよ
「……俺さ、いつか大きな賞取って、すっげーパティシエになって、このLa chérie(ラ・シェリエ)を有名にするのが夢なんだ」
「うん」
「だからさ、これから高校卒業までココで親父にケーキ作り習って、いつか留学してぇんだ」
「うん……」
すると急に黙りこくる琥侑。
「……どしたの?」
「いや……お前さっきから“うん”しか言ってねーから、つまんねぇのかなって思って……」
控えめにそう言った琥侑に、あたしは思わず噴出してしまった。
「違う違う、ただ……嬉しいだけだよ」
琥侑が一所懸命に頑張ってる事を、あたしに話してくれた。
夢を教えてくれた。
そのことが、ただ純粋に嬉しい。
「ヒメ……」
琥侑はゆっくりとあたしを引き寄せる。
その瞬間、ふわっと甘い香りがあたしをかすめた。
「…………」
あたしはただ黙って、琥侑の甘い香りに酔いしれた。