だから、お前はほっとけねぇんだよ
「琥侑、お前言ったよなこの間」
……厨房へ行こうとしたとき、俊太さんの話す声が聞こえた。
その声色がさっきと違って真剣だったので、あたしは厨房へ入るのをやめた。
何だろう……
嫌な予感がする。
「……は?何を」
「高校卒業したら、留学したいってこと」
あたしは二人に気付かれないように、そっと中の様子をうかがう。
さっきのケーキの片付けをしている琥侑。
そして俊太さんはあたしが座っていた椅子に座っている。
「あぁ、うん」
「あれは本気、なんだよな?」
すると、琥侑の手が止まった。
「……親父は俺がそんな事冗談で言うと思ってんのかよ」
「いや?そういうワケじゃないけど?」
そう言った俊太さんは、意味ありげに微笑む。
「……前も言っただろ。俺は一流のパティシエになりたいんだって」
俊太さんを真っ直ぐ見つめながら言う琥侑に、あたしはキューンと胸が締め付けられた。
琥侑……
やっぱり格好良い。