だから、お前はほっとけねぇんだよ
『お前の為とか、そんな格好良い理由じゃねぇんだよ』
――ゴトン
手からすり抜けた鞄は、虚しく音をたてて床に落ちた。
琥侑が……留学……?
「ヒメちゃん……?」
あっと思った瞬間、俊太さんと視線がぶつかる。
「……え」
そう言いながら琥侑がこちらに振り返った途端、ドクンと重く心臓が鳴った。
「っ…あ……」
どうしよう。
……そう思ったときには、衝動的に足が動き出していた。
「ヒメッ!?」
名前を叫んでいる琥侑の声も構わず、あたしは外へ飛び出した。