だから、お前はほっとけねぇんだよ
うそでしょ?
琥侑が来年留学しちゃうなんて。
それってあたしたち、離れるって事でしょ?
琥侑が、行った事もないような遠くへ行っちゃうなんてそんなの……
そんなの絶対耐えられな――
「っおい‼」
グッと腕を強く掴まれて、あたしは動きを封じられた。
振り返ると、肩で息をする琥侑があたしの腕を掴んでいる。
「何……泣いてんだよ」
「っ……」
琥侑に指摘され、掴まれていない方の手で顔を覆った。
指先に、冷えた涙が当たる。
「お前、鞄も持たずに帰ろうとすんな。定期とかどうするつもりだったんだよ」
「そ、それは……っ」
だって、慌てて出てきちゃったし……。
琥侑の留学の話聞いてそれどころじゃなかったし……。
「ほら」
そう言って、琥侑は掴んでいたあたしの腕の方に鞄をかけてくれた。
……真っ暗な辺りに、街灯だけがあたしたちを照らす。
琥侑の顔は微かにしか見えないが、寒いのか鼻先だけ少し赤くなっているのが分かる。
「…………」
あたしはそっと、琥侑の頬に手を伸ばした。