だから、お前はほっとけねぇんだよ
「もー」
あたしはイラつきながら、倒れた看板を立てる。
サイアク……
ていうか、1番サイアクなのはこんな事じゃなくって……
……と、その時。
急に肩をつつかれ、あたしは後ろを振り返った。
「あ」
そこにいたのは、肩まで伸ばした綺麗な黒髪の女の子。
「久しぶり……だね」
そう言って切なく微笑んだ彼女。
……琥侑の事が大好きな、琥侑の幼馴染の智紗ちゃんだ。
「……何?琥侑なら厨房にいるよ」
あたしは看板を立て直しながらそう言った。
久しぶりの智紗ちゃんに少し緊張してしまう。
「琥侑くんならいいの。今日はヒメちゃんに話があってきたから」
「へ?」
あたしに……会いに……?
「バイト、いつに終わるかな」
そう言った智紗ちゃんは、無表情だったけれど心なしか焦っているようだ。