だから、お前はほっとけねぇんだよ

「……え?」



急にそんなことを言われ、あたしはキョトンと智紗ちゃんを見た。



「琥侑くんがアンタに何て言ったか知んないけど、琥侑くんはまだおじさんに返事してないんだよ?」


「うそ……」



あたしはてっきり、もう琥侑は断ったかと……。



「それってヒメちゃんと夢で悩んでるって事でしょ?それくらいわかってるよね」



……わかってる、

わかってるに決まってる。



だってあたしは、誰よりも先に琥侑の作ったケーキを食べさせてもらったんだもん。


あのとき初めて夢の話をした琥侑の表情、今まで見てきた中で1番輝いていた。



そして留学の話を聞いた後の琥侑の表情。

切なくて、穏やかで……いつになく悲しそうだった。


あんなに悲しい顔、もう見たくない。

けど、


「分かってるけど……行ってほしくないの」



黙ってあたしを見つめる智紗ちゃんに、あたしは話し続ける。



「琥侑の夢を応援したい気持ちだってある。だけど……そうなったら時、もう琥侑には毎日会えなくなっちゃうんだよ?」



毎日会って、他愛もないお喋りしたり、笑い合ったり、手繋いだり、キスしたり……。


そうやって二人が大事にしてきたもの、全部失ってしまう。



「絶対毎日不安だし淋しいし……そんなの、考えたくないの」



でも本当はそんな事よりも、

あたしは琥侑に捨てられるのが……怖い。

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