だから、お前はほっとけねぇんだよ

すると、隣から深い溜息が聞こえてきた。



「アンタってほんっとにバカだよね」


「っな……!?」



突然2個も年下の中学生にバカ発言されてしまったあたしは、思わず眉をひそめる。



「どーせアンタ、捨てられるのが怖いとか思ってるんでしょ?」


「ゔっ……それは……」



図星なことを言われて言葉が詰まってしまう、何とも素直なあたし。



「ばっかみたい。どこに耳付けてんの?マジありえない」



溜息混じりに、またあたしをバカ呼ばわりする智紗ちゃん。



「アンタのために琥侑くんは留学を諦めようとしてんの。それって物凄い事だと思わないわけ?」


「は?」


「だって、一生の夢と一瞬の彼女を同じ秤で比べてんのよ?」



……確かにそうだ。


パティシエになる夢は、琥侑にとって叶うまで一生願い続けるほど大きなこと。

それに比べて、たかが現在の彼女ってことだけのあたし。



そんな価値の大きさがあまりにも違う二つの事を、琥侑はどちらを選ぶか迷っている。

ましてや今現在、あたしに傾いている。



「何でなの……?」



あたしがゆっくりそう呟くと、智紗ちゃんは苛立ったように早口で言った。



「それくらいヒメちゃんの事、琥侑くんは大事に想ってるって事でしょうが」

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