だから、お前はほっとけねぇんだよ
その言葉を聞いたとき、ギューッと心臓が押しつぶされるような感覚に陥った。
『ヒメちゃんの事、琥侑くんは大事に想ってる』
……そんな一言、智紗ちゃんの口から出てくるなんて思ってもみなかった。
でも、それ以上にあたしは……
「だいっきらいよ」
「っ‼」
ふいの智紗ちゃんの言葉に、あたしはハッと我に返る。
「アンタなんかだいっきらい……。
そんなにまで好きでいてくれてるのに、何でそんな自信なさげなこと言うの?何で素直に応援しないの?」
智紗ちゃんは俯きながらそう言う。
……その声は心なしか震えている。
「何よ……あたしの方が絶対、琥侑くんを好きなのに……何でアンタばっかり」
「智紗ちゃん……」
あたしは……本当に大馬鹿者だ。
両思いだからって欲張って、自分ばっかり優先して……見失ってた。
琥侑を……琥侑をただ好きだって言う、素直な想い。
そして、琥侑があたしを好きだという事がすごく涙が出るほど嬉しい事。
「ごめん……智紗ちゃん、ホント大バカだよあたし……」
あたしがそう言うと、スッと立ち上がる智紗ちゃん。
「っ……アンタなんて……早く琥侑くんと別れちゃえば良いのにっ……」
か細い声でそう言って、智紗ちゃんは歩き出した。