だから、お前はほっとけねぇんだよ
すると急に、琥侑の顔が曇った。
「……だから、その話は良いって言っただろ。俺は行かない」
「じゃあ何で……
何で俊太さんに留学の件断ってないの?」
「それはっ……」
あたしはそっと、琥侑の手に自分の手を重ねた。
……あたしより琥侑の手の方が温かい。
「琥侑、本当は行きたいんでしょう?」
琥侑はあたしから視線を逸らし、自分より少し前の地面を見つめる。
「……なのに何で行かないとか言うの?それってあたしの為なわけ?」
「……違う」
「違わないでしょ。それ以外琥侑に行かない理由なんてないじゃ……」
「だから違うって‼」
ふいに声を荒げた琥侑に、あたしは驚いてビクンと肩を揺らした。
「お前の為とか、そんな格好良い理由じゃねぇんだよ」
無理やり自分を落ち着かせようとしているのか、琥侑は顔を歪めて苦しそうにあたしに目配せする。
そんな琥侑に鼓動を乱され、あたしは言葉を失った。
「俺は……っ怖いんだよ」