だから、お前はほっとけねぇんだよ
『俺の我が儘も聞け』
『俺、フランス行くよ』
……琥侑からその言葉を聞いてから、もう何ヶ月経っただろうか。
「ねー姫瑚、佐賀里くんっていつ留学すんの?」
ゆっちと久しぶりのショッピング。
大きな紙袋を沢山持ったゆっちは、ふと帰り道の電車の中で聞いて来た。
「んー……ちょうど来月の今頃だね」
「っえ!?もうすぐじゃん‼」
驚くゆっちを見て、あたしは思わず笑ってしまった。
琥侑が留学を決意した11月からあっという間に月日は過ぎて、2月が終わりを迎えようとしていた。
……2年生の終業式の3日後、琥侑はフランスにある俊太さんの知人のお店へと旅立つ。
なんでもその知人はかなりの有名人らしく、琥侑は留学する前にそれなりの腕になってフランスへ来るってのがあっちの要望らしい。
だからあの日以来、俊太さんのスパルタレッスンとフランス語の勉強に勤しんでいる琥侑。
そんな大忙しだって言うのに、琥侑はあたしに対して今まで通りキッチリと接してくれる。
「確か……フランス行くんだったよね?」
「うん、良いよねーフランス。だって毎日有名パティシエのスイーツ食べれるんだよ?」
「そうだけど……アンタどうなの?」