だから、お前はほっとけねぇんだよ

『わかんね』


「は?」



わ、わかんね?



『たぶん……早くても4、5年くらいじゃね?』



琥侑の言葉を聞いた途端、あたしの中で何かが壊れたような気がした。



4、5年……も?

4、5年も琥侑に会えないの……?




「え……お正月とかは?帰ってくるんでしょ?」


『アホ。見習いになる俺に、そんな金と余裕あると思ってんのか?』



じゃあ……

1ヵ月後経って琥侑がフランスに行っちゃったら、もう4、5年は会えないの?


あたし、てっきり1年ごと琥侑は日本に帰ってくると思ってた。



『……ヒメ?』



不安げな琥侑の声によって、あたしはハッと我に返った。



「あ……そっかー、しょうがないよね。フランスと日本すごい遠いもんね‼」



しんみりした雰囲気。

あたしはわざと明るく振る舞う。



「あたし琥侑におみやげとか頼もうって思ってたのに残念だなー」


『おい』


「あっ!でも別にそっちいても送ってもらえばいっか‼」


『ヒメ』



別に怒鳴られたわけでもない。

なのに琥侑に名前を呼ばれた途端、あたしは急に言葉が出なくなった。

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