だから、お前はほっとけねぇんだよ

「……?」


あたしはよくわからないまま、琥侑が差し出した右手にそっと自分の右手を重ねた。



……少し温かい琥侑の手のひら。

あたしはその温度に、何故だか不思議と安心してきて、自然に涙は止まった。




「俺、もっとでっかくなるよ」



……ふいの琥侑の一言。

手を見ていたあたしは、琥侑の顔へと視線を戻す。



「一流のパティシエになって、お前に心配させないくらい……


大きくなってやるよ」



……片方の口角を上げて意地悪そうに笑う琥侑。

その仕草がすごく琥侑らしくて、あたしは思わずときめいた。



「あたしも……もしまた琥侑に会える時はもっと大人になって、……」



“琥侑を支えられるような人になっていたい”



……そう言いたかったけど、口から出してはいけない気がしてあたしは口をつぐんだ。



「……“大人になって”何だよ」


「大人に……なって……」



真剣な琥侑の顔を見ていると、喉の奥が詰まったみたいに言葉が出ない。



「やっぱなんでもなぃ……」



……結局、

言えなかった。

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