だから、お前はほっとけねぇんだよ
「おいし……っ‼」
ただのチョコケーキじゃない。
素人だから……良くわかんないけど、苦さの中にほんのりと甘さが交わって、その調和が絶妙。
こんなおいしいケーキ、初めて食べたかも。
ううん、久しぶりだ。
琥侑の……琥侑のおじさんのケーキ以来。
『実は俺、パティシエになるのが夢なんだ』
……そう言えば、
琥侑の作ったケーキを初めて食べたときもチョコレートケーキだった。
琥侑、あたしに夢の話してくれてた時すごくキラキラしてたなぁ……。
今もキラキラしてんのかな?
もう、会う事なんて無いから分かんないけど。
『……じゃあな。ヒメ』
琥侑との関係はあの時終わったのに。
あたしたちは確実に前へ進んでいるのに……。
あたしの気持ちだけ、あの時から置いてきぼり。
……あたしはずっと、琥侑を好きなままだ。
「って」
何考えてんだあたしは。
何も進めないあたしに、何も起こってくるはずない。