GREATEST JADE~翡翠の瞳に守られて~
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週末、私は瀬里の家に泊まる事にした。

「凄く嬉しいけど……どうしたの?翠狼と喧嘩とか……?」

瀬里は心配そうに私を見たけど、私は首を横に振って笑った。

「ちがうよ、そんなんじゃない。ただ瀬里と夕飯作って食べたり勉強したりテレビ見たかったんだ」

ごめん、瀬里。

それは本当だけど、それだけじゃないんだ。

……実は私、マリウスに会いに行くと決めたんだ。

翠狼の家だと抜け出すのは絶対に無理だ。

でも瀬里の家に泊まると言えば彼は恐らく疑わない。

瀬里を利用して申し訳ないけど、これしか方法がなかったんだ。

「じゃあ明日、朝から瀬里の家に行くね」

「うん!」

瀬里の屈託のない笑顔が、チクリと胸に刺さる。

私は瀬里に手を振ると、彼女に背を向けて歩き出した。
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