GREATEST JADE~翡翠の瞳に守られて~
「どうぞ」

「……はい」

広い部屋の端には純白のグランドピアノが置いてあり、同色の丸いテーブルがゆったりとした距離を開けて沢山設置してある。

その時部屋のシャンデリア全てに明かりがつき、各テーブルに一輪ずつ生けられた真っ赤な薔薇が見えた。

マリウスが私を見下ろして微笑みながら、

「見ての通り閉店だから何処に座ってもいいよ」

あかりの下で見るマリウスの印象は、綺麗な外国人男性といった感じだった。

灰色がかった青い瞳はとてもじゃないけどヴァンパイアには見えない。

……いや。律もそうだった。ヴァンパイアには見えなくて……。

そりゃそうだよね。いかにもヴァンパイアなんて人、いないよね。

「じゃあ、ここに座ろう。どうぞ」

「……」

マリウスは……独りなんだろうか。
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