GREATEST JADE~翡翠の瞳に守られて~
さっきまでの寒さが嘘みたいに身体が熱い。

私は焦ってブンブンと頭を振った。

「振るわけないじゃん!彼は大人だし、私なんかに興味ないよ!」

私の答えに山下くんは眉を上げて、呆れたような顔をした。

「……お前……好きって言わないの?コクった方がよくね?」

「な、なんでっ?!」

「なんでって、好きって顔に書いてあるって言っただろ?」

山下くんは一旦言葉を切ると、再び続けた。

「お前じゃねーぞ?!」

「どういう意味?!」

言い終えた山下くんが前方を見て、少し身体を伸ばした。

なにかを見定めるように両目を細めて遠くを見つめているから、私もつられて彼の視線を追ったんだけど……。

「うっわー、今日は一段と俺を睨んでる」

「え?!」

「ほら、あそこ」

クッと顎を上げて、山下くんが身震いした。

……う、そ。

学校を出て、大通りに向かって歩いていた私達の視線の先に、見知った姿があった。
 
……翠……狼……。

あのスラリとした姿は、紛れもなく翠狼だ。

近づくにつれて表情が見えてきたんだけど……本当にこっちを睨んでいる。
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