GREATEST JADE~翡翠の瞳に守られて~
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結局翠狼は家につくまで一言も喋らなかった。

「お邪魔します……」

「……」

車を降りた私の手を再び掴むと、彼はリビングへと歩を進める。

「あの、翠狼……」

「さっきの事だが」

ドアを閉めるとようやく私の手を離して、翠狼がこちらを見下ろした。

「うん……」

うつむく私に彼が低い声で問いかける。

「あの男とはどういう関係だ」

「……山下くん?山下くんは、同じクラスで、」

「お前はただのクラスメートと抱き合ってあんなことまでするのか」

険を含んだ言葉で私の声を遮った翠狼を思わず見上げた。

抱き合って、あんなこと?

考え込む私に、翠狼が苛立たしげに瞳を光らせる。

「答えろ」

違うのに……。

違うよ翠狼、山下くんとはそんなんじゃない。

私が……抱き締めたいのは……。

私が、抱き締めたいのは……翠狼、あなただよ。

だって好きなんだもの。すごく、すごく。
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