GREATEST JADE~翡翠の瞳に守られて~
でも、翠狼は私に『これからは抱きつくな』って……。

「翠狼には……しないよ」

悲しすぎて声がかすれた。胸だってギシギシする。

私を見て翠狼が驚いたように息を飲むのがわかった。

好きだよ……。私は、あなたが好き。

気持ちとは裏腹な事を言うのがこんなに辛いなんて、あなたを好きになって初めて知ったよ。

「……翠狼には……しないよ……。なのにどうしてそんなこと言うの?」

胸がズキズキして、死にそうなくらい痛い。

涙が頬に筋を作り、それがいくつもいくつもこぼれ落ちる。

好きなのに、誰よりも好きなのに、私の想いは届かない。

「もう、迷惑はかけない。だから……さよなら」

「藍」

「……っ!」

その瞬間、心臓が止まるかと思うほどの衝撃が、私の身体を駆け抜けた。

だって、翠狼が……翠狼が、私を抱き締めたんだもの。
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