GREATEST JADE~翡翠の瞳に守られて~
しかも律に送ってもらってからも、私は瀬里や雪野一臣の事を思い出さずにいた。

そう考えると急に胸がキュッとして、私は思わずそこに手を当てた。

……律の事しか……考えてなかった、私。

雪野一臣の家を飛び出した後すぐに律に出会って、私の心の中は律でいっぱいになってしまっていたのだ。

こんな自分がなんだか信じられなくて、私は思わず眉を寄せた。


『昼間はごめん。私は大丈夫』


瀬里へラインを送ると部屋の電気もつけずにバルコニーに出て、私は空を見上げた。

仕事で帰ってこないパパとママを諦めた私は、勉強の合間に空を見上げるのがすっかり癖になっていた。

だって、真っ暗な空にある月は、私に似ているから。

近くに光る星はあっても、月はひっそりと孤独で、その冷たげな姿と自分がすごく被るんだ。

案の定独りぼっちの月は私に似ていて、次第に見ていられなくなった私は眼を伏せた。
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