GREATEST JADE~翡翠の瞳に守られて~
「藍ちゃん、あのね、あ」

「瀬里、待て」

瀬里が何か言いかけたとき、雪野一臣が低い声で彼女を呼び止めた。

「けど翠狼……」

その後瀬里は、予鈴を過ぎた頃になってようやく教室に入ってきた。

それからも瀬里はぎこちない視線を頻繁に送ってきたけれど、やがて諦めたらしく、この日彼女は放課後になっても私に言葉をかけてはこなかった。

****

学校を出ると、私は何の迷いもなく家とは違う方向を目指した。

……律に……律に会いたかったから。

彼の事は何も知らないけれど、あの屈託のない笑顔を見たかった。

初対面の私に、あんな風に接した律にもう一度会いたい。
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