GREATEST JADE~翡翠の瞳に守られて~
「…………」

……返事が返ってこない。

少し視線をあげて雪野一臣を見ると、彼は眉を寄せて考え込んでいる。

「帰る」

「待て」

「なに」

数秒の沈黙の後、雪野一臣が口を開いた。

「お前はその……瀬里に聞いたが両親とも忙しくて留守がちだとか」

「……それがなに?」

私がそう言うと、再び雪野一臣は困ったように眉を寄せた。

「だからその」

「どうでもいいでしょ」

リビングのソファに案内されていた私は、進まない会話にイライラして立ち上がった。

「もう帰る」

「ダメだ帰るな。……夕食の仕度をするから」

……え?
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