GREATEST JADE~翡翠の瞳に守られて~
私は驚いて雪野一臣を見上げたけど、彼は素早く踵を返し、キッチンへと足を進めた。

……そんなの気まずい。迷惑かけるのも嫌だし。

「いいよそんなの。独りは慣れてる。それに雪野さんは忙しいんでしょ?私の事は気にしないで」

「忙しくない」

「でも」

その時、雪野一臣がチッと舌打ちした。

「とにかく今日、お前は俺と夕食を作れ。そして一緒に食え。分かったか!」

大声のわりには顔が赤くて、私は雪野一臣を凝視した。

またしても見た目と中身の差を感じる。

……瀬里といいこの雪野一臣といい、お節介というか真面目というか……。

「プッ……」

笑いがこみ上げてきて我慢できなくて、私は思わず吹き出してしまった。
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