GREATEST JADE~翡翠の瞳に守られて~
「全然寒くない。俺は寒さに強い」

……私に気を使わせないようにそう言ってくれているのが分かるから、余計に申し訳なく思ってしまう。

暫く歩いた時、艶やかな声が耳に届いた。

「藍」

急に名前を呼ばれてハッとした。

辺りは暗かったけれど、私は十メートル程先の街灯の下に律の姿を見つけた。

途端に胸がドキンとして、寒さを忘れる。

「律っ!」

反射的に駆け寄ると、律が私を腕の中に囲った。

「家にいなかったから心配した。何してたの?」

私は律を見上げて笑った。

「あのね、律。今日は友達に画のモデルを頼まれててね。で、」

私がそこまで言った時、律が冷たい声で短く言った。

「……野良犬の匂いがする」
< 82 / 293 >

この作品をシェア

pagetop