GREATEST JADE~翡翠の瞳に守られて~
ニコニコしながらそう言った瀬里を見ていると、どうやら昨日、雪野一臣が律に遭遇して言葉を交わした事は知らないみたいだった。

律とは家につく頃にはすっかり仲直り出来たけど、私はもう雪野一臣とは会わないでおこうと思ってる。

だって、私は律が好きだし嫌われたくない。

律を不安にさせたくないし、律を失いたくないから。

「藍ちゃん、今日は時間ある?もし時間あるなら、昨日の分もガッツリ下描きしときたいんだ」

近頃は授業が午前中で終わる日が多い。

一瞬、律の顔が脳裏をよぎった。

でも、一度画のモデルを引き受けておきながら途中で投げ出すなんて出来ない。

「いいよ。でも……お願いがあるの」

「なんでも言って」

「実はね」

少し深呼吸したあと、私は思いきって口を開いた。
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