GREATEST JADE~翡翠の瞳に守られて~
「大丈夫。一臣君が車で送ってくれたから」

「…………」

「藍ちゃん?」

黙り込んだ私を瀬里が訝しげに見る。

「……もしかして……一臣君がなんか気に入らない事した?私が先輩と出掛けた後でなんか……」

私は慌てて違うと口走った。

「……そうじゃないの。雪野さんは凄く私に親切だったよ」

その時、律の呟くような一言が頭をよぎった。

『野良犬の匂いがする』

律は明らかに雪野一臣をよく思っていない。

でも私が感じるに、雪野一臣は絶対に悪い人じゃない。

言葉足らずで可愛い気のない私を、ちゃんとひとりの人間として見てくれた。

私となんか面識もなかったのに、優しかったし。
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