GREATEST JADE~翡翠の瞳に守られて~
だって、両親にすら愛されていないのに。

私は振り向かずに答えた。

だってこんな泣きそうな顔、見られたくないもの。

「うん、ありがとう。……画がキリのイイところまで進んだらケーキ食べよう。美味しいって評判の洋菓子店で買ってきてるんだ」

「う、うんっ」

瀬里の弾んだ声を聞きながら、私はパネルを二階へと運んだ。

****

「瀬里……天才だね」

一通りの下描きを終えた瀬里の隣でその画を覗き込んた私は、あまりの素晴らしさに息を飲んだ。

「ええっ?!て、天才は藍ちゃんだよ!クラスのみんなが言ってたよ!藍ちゃんはほんとに凄いって!4次式以上の微分と、3次式以上の積分の入試問題の例題を教えてもらったら先生より分かりやすかったって!」
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