Sweet Hell

上司は一つ咳払いすると隣にいる男性を紹介した。

「今日からここの営業担当者として配属になった
本郷 大輔（ほんごう だいすけ）さんだ。じゃぁ、挨拶をお願いします。」

そう言われると彼は明るく返事をし、
爽やかな笑顔で皆に自己紹介を始めた。

「本郷 大輔と申します。前いた部署でも営業をしていたため
その経験を活かし、こちらでも営業成績を上げられるよう尽力して参りますので
何卒宜しく御願い致します！」

彼が深くお辞儀をすると皆であたたかい拍手を送った。

彼の席はみほの目の前だった。
彼が着席すると同じチームのみんなに挨拶をした。
すると彼の隣、私の前に座る20代前半の秋葉ちえみが
可愛い声で「宜しくお願いします」と応えた。

それに気づいた彼は彼女の方を向くと
はにかんだ笑顔で「宜しくお願いします！」と応えた。

「本郷さんって何歳なんですかー？」秋葉さんが聞くと
「あ、自分ですか？33です。」と本郷さんは応えた。

「えー見えないです。若〜い！」と秋葉さんが言うと続けざまに
「彼女さんとかいるんですか？」と質問した。

すると彼は「あ、彼女は今はいないですね」と
照れた感じで応えた。

更に秋葉さんが質問しようとするのを私は
「今は仕事中だからまた後でね！」と言って制した。
いわゆる私はお局の役柄だった。

秋葉さんはお局に言われてわざとらしくしょぼんとすると
「はぁ〜い」と言って仕事を再開した。

私は少しため息をするとふと視線を感じて斜め前を見た。
本郷さんと目が合ったので思わずびっくりすると
彼が笑顔で「すいません」と言ってきたので
私は思わず「いえ」と言って苦笑いした。