Sweet Hell
事務所に戻り席に着くと珍しく課長が本郷さんのところに来て
何かを話しているようだった。

「いやー今回のプレゼンはなかなか良かったじゃないか。
忙しい合間に良く出来たなぁ」

「いえ、私はあくまでもポイントを押さえて指示したまでで。
ほとんどは木下さんが作成してくれました」

どうやら先日私が本郷さんの指示のもと作成したパワポのことで
課長から直々褒め言葉を頂いているようだった。

「そうだったのか。木下さん、すごいじゃないか!」

思わず名前を呼ばれたので驚いた私は「あ、はい!」と返事をして
課長の前まで行った。

「彼のプレゼンが良かったので褒めてたんだ。
このパワポは木下さんが作ったんだってな。
素晴らしかったよ」

そう褒められてびっくりした私は思わず
「Thank you」と応えてしまった。

そのため一同が大爆笑。

「なんで英語でお礼言ってるのよ!」とみほにつっこまれても
私はどうにもこうにもうまい言い訳が思いつかなくて
「すいません・・・」と課長に謝るしか出来なかった。

ジャスティンとの英語でのやり取りが癖ついてしまっていたため
咄嗟に英語で言ってしまったようだった。

私は恥ずかしさのあまり、下を向くとそそくさと自席に戻り
自分の火照った顔を冷ますように「フゥ〜」と言いながら右手を振って仰いだ。

その時、本郷さんと目が合ったが
私は彼を気にすることなく仕事に取り掛かった。
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