Sweet Hell

今がすべて

少し遅れてではあるが、本郷さんの歓迎会が執り行われることとなった。

駅から程近い雑居ビルの中にある居酒屋で歓迎会が行われた。

「遅くなっちゃってごめんねー。」と今回の幹事であるみほが言うと
「いいんですよ。繁忙期なのにわざわざすいません」と本郷さんも感謝の言葉を述べた。

本郷さんの隣にいる秋葉さんが「わぁ、美味しそう」と鍋の中を覗いていたので
彼女の前に座っていた私は「そんなことより、本郷さんに酒を注いで」と彼女に指示をした。
「もう、こんなとこでもお局にならなくていいのにー」とみほがフォローを入れたので
正しいことを言った私がまるで悪者扱いされたように周りから笑われた。

本当は本郷さんの歓迎会になんて参加したくなかった。
どうでもよかった。こんな無駄な時間なんてすぐに通り過ぎて
早くジャスティンに会いたいと思っていた。

「ねね、二人はもう結婚するの?」
興味津々にみほが本郷さんに尋ねると
「いやぁ、まだそこまでは考えてないですよ」と苦笑いしながら本郷さんが応えた。
彼を更に困らせるように秋葉さんは「私は早くしたいんですけどねー」と応えた。

さっさと結婚すれば良いのに。
そう言いそうになって止めた。まるで僻みのように聞こえるけど本心だった。
二人の未来のことなんてどうでも良過ぎて思わず出た言葉だった。

私はふと携帯を見ると彼からメッセージが届いているのに気づいた。
私はトイレに行く振りをして席を外すとトイレ近くにある誰もいない通路に出た。

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