Sweet Hell

”え？どうゆうこと？私たちは行かないの？”

”行かないよ。だって僕はメープルに案内してもらうから”

「えー！！」って、そんな大それたこと出来ないよと思い
責任を感じて少し戸惑っていると突然、彼は
”メープル、逢いたかったよ”と言って私を抱きしめた。

え？ちょ、ちょっと。ここ雷門の前なんですけど、
みんな見てる！！

すると彼は抱擁を弱め、少し屈んで私の顔を両手で持ちながら見ると
”本当に君は美しいよ！”と言って、そのまま口にキスをしてきた。
しかもディープキス！
彼は唇を離すと私を見つめ、”ずっとこうしたかったんだ”と言った。

「ウェイト！」

”え？”

”待って！ちょっと待って！一旦、ちょっと私から離れて！”

そう言うと私を彼を押しのけた。

”どうしたの！？”

突然の私の拒否反応に理解できなかったのか、
彼はオーバーリアクションで”why？”と聞いてきた。

”なぜって・・・”
そう言いながら私は恐る恐る周りを見た。
案の定、みんなの視線が私たちを向いていた。
気まずそうに見ない振りををする人もいれば
「よくこんなとこで出来るよね」とか「情熱的ね」だの声が聞こえた。

”なぜって・・・ここは日本だからよ”
”WHAT！？”

私はTPOをどう説明したら良いのか分からず
”とにかく日本ではこういうことしちゃいけないの！”と言った。

”ただの挨拶だよ！”
”アメリカではそうだけど日本はそうじゃないの！”
でも、彼はあんま理解しなかったのか
”そんなに嫌だったのなら、もうしないよ”と言って落ち込んだ。

嫌ではない。けど、英語でなんと言えば良いか分からず私は
”ただ、恥ずかしいだけ。本当は嬉しいのよ”と目を逸らしながら言った。

すると彼はたちまち嬉しくなったのか
”Don't be shy!!”と言うとまた私を抱き締め、
ほっぺににチュッとしてきた。

いやーもう、なんか違うけどまぁいいか。
説明するのも疲れたので私は彼の愛情表現を受けながら
彼に”お腹すいた？”と聞いた。

彼は、私の顔を見ると”Yeah”と応えた。
私が”何が食べたい？”とすかさず聞くと
彼は私の耳元で”You”と応えた。