Sweet Hell
彼の低くて甘い色っぽい声が耳から身体中に広がり、
私は一瞬ゾクッとなった。

「え?」

私は恐る恐る彼の顔を見た。
彼が狡猾そうな顔で私を見下ろした。

”いや、そうじゃなくて。フードよ!食べ物!”

彼は残念そうな顔をすると
仕方なさそうに”ヌードル”と応えた。

麺類か、この辺にあるのかな。
それよりもコロコロと変わる彼の表情を見て
私は不思議に思った。

喜んだり、落ち込んだり、
リアクションが激しいなと思った。
日本人男性だったら例え喜んだり落ち込んだりしても
あまり表情に出さない。

私も日本人男性と同じように本心を見せるのはあまり好きではないから
ジャスティンとのコミュニケーションにちょっと苦労しそうだなと思った。

”じゃぁ、ラーメン食べよう!ラーメン!”
そう言うと”おぉ、良いね!行こう!”と彼が応えた。

”行こう”と言って私が踵を返すと
彼は嬉しそうに私の肩に腕を置いた。

私はまたしても驚きと困惑とで険しい表情をしながら彼の方を見た。

”どうしたの?”
”いや、なんでも”

本当に積極的だなぁと思いながら
私たちはそのままラーメン店へと足を運んだ。
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