Sweet Hell
すると彼は”No"と言って、”フォークが良い”と言ってきた。

「フォーク!?」

”そうだよ。ヌードルを食べる時はいつもフォークを使ってるんだ。
フォークないの?”

「フォーク!?」

まさか、ラーメンをフォークで食べたいと言う人がいるとは思わなかった。
フォーク・・・あるのかな。
聞くのも恥ずかしいよ。

私は意を決すると「フォークはありますか?」と店員に尋ねた。
案の定、店員も「え、フォーク!?」と聞き返したが確認しますと言って一旦奥に入ると
戻ってきてフォークを持ってきてくれた。

ジャスティンは”Thanks”と言ってフォークを受け取ると
フォークを使って器用にラーメンを食べ始めた。

私はその光景を好奇と不審が入り混じった複雑な思いで見ていた。
本当にラーメンをフォークで食べてるよ、と心の中で思った。
彼は私の視線に気づいたのか”食べたい?”と聞いてきた。
私は慌てて否定すると彼は、私の味噌ラーメンを食べたいと言って
フォークを使って少しだけ掬い上げた。

”うん、そっちのも美味しいね!”と言うと
また醤油ラーメンを食べ始めた。

私がラーメンを食べている間、チラチラと私達を見ている女性がいた。
ジャスティンの隣に座っている女性客で見る限り、若さの感じや服装から女子大生と判断した。
彼女は私と目が合うと「か、格好良い彼氏さんですね。アメリカの方ですか?」と聞いてきた。

「ありがとうございます。そう、アメリカから来たの。けど彼氏じゃないよ」と私も応えると
ジャスティンも彼女の存在に気づいたのか
キョトンとした顔で私を見ると”彼女なんて言ったの?”と聞いてきた。

”あなたがハンサムだって”と言うと彼はすごく喜んで
彼女に向かって極上の笑顔で”Thank you so much!! You are very very pretty!!”と
彼女のことを可愛いと褒めた。

彼女は彼の英語が聞き取れなかったのか私に向かって「彼はなんて言ったんですか?」と聞いてきたので
私は彼女に「ありがとう!君はすごく可愛いねだって」と言うと
彼女は照れて顔を真っ赤にしながら「そ、そんなことないですよ」と恥ずかしそうに応えた。

”彼女なんだって?”
”ノーだって。私は可愛くないって”
”そんなことないよ!君はとても可愛い!”と
彼は慰めるように彼女の二の腕を掴んで説得し始めた。
ジャスティンのあまりの積極性に彼女も驚いたのか
彼の整った美しい顔で見つめられ、最後は諦めて「サンキュー」と応えた。
”Good”
ジャスティンは満足すると腕を離し、またラーメンを食べ始めた。
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