Sweet Hell
次の日位から秋葉さんと本郷さんが急接近しているという噂が流れた。

「なんか、もう2人でサシ飲みとか行ってるって噂だよ」
そうみほに言われて、私の入る隙間なんてないじゃんと思った。

トイレで秋葉さんと会った時、私は彼女に聞いてみた。
「なんか、本郷さんとサシ飲みしたって噂聞いたけど本当?」

内心、嘘だったら良いなと思っていたけどその願いも虚しく
「えぇ、行ってきましたよ!本郷さんから誘ってきましたので」と
嬉しそうに秋葉さんが応えた。

しかも、サシ飲みした事実よりも本郷さんから誘ってきたというセリフに
私はショックを受けた。

「そうなんだー。じゃぁ、付き合っちゃうんじゃない?」と気持ちを誤魔化しながら言うと
「えーどうですかね。そんな雰囲気とか無さげでしたよ?」という彼女の軽々しい否定に
どこかでホッとしている自分がいて悔しい。

彼女よりも先にトイレから出ると喫煙所から出て来る本郷さんとバッタリ会った。

「あ、営業の帰りでした?」

そう声かけると「はい、つい先ほど戻ってきたばかりです」と彼は笑顔で応えた。

「今日は途中で雨が降ってまいりましたよー」

「えー、それは大変でしたね。お疲れ様です」

彼の労を労うと彼は嬉しそうに「ありがとうございます」と応えた。
けれど、それ以上会話が続くこともなく、ましてや飲みの誘いとかもされるはずもなかった。

「では、佐々木課長に報告がありますのでこれで失礼します!」

「はい、お疲れ様です。」

そう言って彼とは別れた。
< 4 / 86 >

この作品をシェア

pagetop