Sweet Hell
「おはようございます」

週明けの月曜日、事務所に入ってそのまま席に着くと
やけにみんなの視線を感じて私は顔を上げた。
案の定、秋葉さんやみほが私の方を見ていた。

「え？何？」
私は訳が分からなかったのでみんなに尋ねると
「なんか雰囲気変わりました？」と秋葉さんが言ってきた。

「え？」

するとみほも「なんか、楓色っぽくなったよ」と言ってきた。

「え？マジで？」

「なんかあった？」

そう聞かれて、ジャスティンと会ったなんて話が出来なかったため
「別になんもないよー」と笑ってごまかした。

さぁて、仕事仕事。なんて言いながら私は着席した。

ジャスティンと出会ってから私の生活が潤い始めた気がする。
みずみずしい果実のように。
蜜の詰まった私は生き生きとしてすべてが輝いてみえた。

もう大丈夫、私にはジャスティンがいるから。
未来なんてどうでもいい、今が一番楽しければいい。
いつかは誰かと結婚して平凡な毎日を送る義務を課されるくらいなら
今ぐらい自由気ままにありのままに欲望のままに生きてもいいじゃない。

あまりにも私が楽しそうに生き生きしながら仕事していたので
みほは不審に思ったのか昼休み私を誘って少し会社から離れた
おしゃれなレストランに連れてきた。

「ねぇ、本当に何があったの？」

「えー？なにが？」

私がフォークを使ってパスタをクルクル巻きながら
真剣な顔で聞いてくる彼女を見ずに軽い感じで聞き返した。

「最近、楓なんかおかしいよ。携帯ばっか見るわ、急に綺麗になるわで」

「そうかな？ありがとー」と適当に返事を返す。

「絶対恋愛してるでしょ？」

そう聞かれて、私はふとパスタを掬い上げた手を止めた。
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