Sweet Hell
それは、浅草でカーター家族に自己紹介をした時だった。

***
ジャスティンの母親が”ちょっとキャサリンに似てるわね”と言ってきた。
父親も私とキャサリンを交互に見ると
”確かに・・・並んでるとまるで美人姉妹だ。はっはっは”と愉快そうだった。

私とキャサリンはお互い目が合うと
彼女は肩を竦め、両手を少し上げ首を傾げた。
ジャスティンも”まぁ、そう言われればそうだけどーメープルの方が綺麗だよ”と言って笑った。
私は、そんなことない!という意味を込めて”No,no,no!!"と否定した。
彼の一言が本心なんだか、私への気遣いなんだか、冗談なんだか分からなかったけど
キャサリンにジャスティンのバカ!みたいな感じで言われ叩かれながら
「ははは!キャサリンも綺麗だよ」とフォローしているところを見ると
冗談だったんだなぁと思う。
***

あのセリフは、冗談じゃなくて私への気遣いだったんだね。
もしかして私に近づいたのは私がキャサリンに似てるから?
本当の本当は私じゃなくて
妹のことが好きなんじゃないの・・・?

そう考えた瞬間、ゾッとして全身に鳥肌が立った。

”何勘違いしてるんよ!キスって頭とかほっぺとかにするくらいで
唇にするわけないじゃん!”

例えそうだとしても私の疑念と怒りは収まらなかった。

”本当は私じゃなくて妹のことが好きなんじゃないの?
私が妹に似てるから好きだって言ったんでしょ。でも、違う。
本当に好きなのは妹の方なんでしょ!
気持ち悪い!あなたは、くそ兄貴だわ!”

本心だけど暴言にも似た発言だった。
どうか否定して。
そうじゃないよって言って私を安心させてよ。
じゃないと私どうにかなりそう。

こんなひどいこと言っておきながら
私は心の中で許しを請い
彼が私だけを愛してるって言ってくれるのを期待してた。

けど、現実は違った。

彼から来た返事を見て私は絶句した。

”君は僕を侮辱したからもういいよ。さよなら”

その一言で私の心が凍り付いた。



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