Sweet Hell
「木下さん、最近元気ないですけどどうしたんですか？」

「え？」

突然の問いに驚いて私は思わず彼の方を向いた。

「元気ない？私が？」

そんな素振りを仕事中に見せた覚えはなかった私は
なんでそう本郷さんが思ったのか疑問だった。

「仕事中はいつも通りなんですけど、なんというか
一人で休憩してるときとか、元気がないというか
時々悲しそうな顔をしてたんで気になって・・・」

「え？私が？」

私、無意識に暗い顔してたんだ・・・。
元気に振る舞ってたつもりだったのに
見透かされてたなんてちょっとショックだった。

「なにか、あったんですか？」

私は俯くと軽く深呼吸をしてから
「好きだった人に振られたんです」と応えた。

「そうでしたか・・・・」
本郷さんはそう言うとそれ以上詮索はしなかった。

「実は、私も秋葉さんとは・・・」

「知ってます。別れたんですよね？」

私は顔を上げて彼の方を見た。

「あ、知ってましたか」

彼は笑ってそう応えるとすぐに真顔になって
私の顔を見つめてきた。

私は彼の視線に耐え切れず目を伏せた。

すると本郷さんが突然思いもしなかったことを
言い始めた。

「実は私、前から木下さんのことが好きだったんです」

「え！？」

驚いて彼の方を見ると彼は私の方をまっすぐ見て
話を続けた。

「最初見た時から良いなぁと思ってました。
けれど自分はきっと相手にしてもらえないだろうなぁと思って
諦めたんです。そしたら、秋葉さんから積極的にアプローチされるようになって
押しに負けたといいますか、情けないんですが若くて可愛いし、
どうせ木下さんとは付き合えないだろうと思ったら
良いかなぁと思ってそのまま彼女と付き合ってしまったんです。」

「はぁ・・・」

「こういう草食系なとこダメだとも友人に言われますけどね。」と言って
本郷さんは軽く笑った。
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