Sweet Hell
「もし良ければ俺たち付き合いませんか?」

「え?」

「すぐにとは言いません。ただ考えて頂けませんか?」

そう言い終えると彼は立ち上がって
「では、仕事が残ってるのでお先に失礼します」と言って
行ってしまった。

私は戸惑ったまま何も言うことも出来ず
どうすることも出来ずただ座って先ほどの街路樹の方を見た。
あの高校生二人は既にいなくなっていた。

本郷さんが私の事を好きだったの・・・・?

知らなかった、そんなこと。
私はどうだった?

確か私も最初は彼の事気になってた。
でも、彼が秋葉さんと付き合ってから
どうでもよく感じたんだ。
なんで今更・・・。

私は頭を垂れた。

彼の告白は正直うれしかった。
まるで乾れかけた花に恵みの水をくれたような救いの言葉だった。

ジャスティンに嫌われただけなのに
あんなに私を愛してくれた人に
あんなに私にキスしてくれた人に
いっぱいいっぱい愛情をくれた人に
拒絶されただけで
世界中の人に嫌われてるような孤独感を感じてた。

そんな時にこんな私を
好きだって言ってくれた、うれしかった。
本当にうれしかった。

私は急いで事務所に戻ると
誰もいないオフィスに彼だけが
自席に着席してパソコンに向かって仕事をしているのを見つけた。

私はそのまま彼の方に進むと
「本郷さん」と彼を呼んだ。

彼は少し驚いたようだったがその状態のまま
私の方を見上げた。

「よろしくお願いします」そう言って私がお辞儀をすると
彼は察したのか「マジで!?良いんですか!?」と言って立ち上がった。

「はい。こんな私で良ければ」

そう言うと彼は嬉しそうに「よし!」と言ってガッツポーズをした。

その動作におかしくなって笑っていると
彼が私の方を向いたので私は押し黙った。

本郷さんはゆっくりと顔を近づけると
恐る恐る私の唇にキスをした。
軽いくちづけだった。

ジャスティンとは違って何度も食むような甘いキスではないけど
きっとこの先慣れるよねと思い、そのまま本郷さんのキスを受け入れた。
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