Sweet Hell
部屋に入るとカーテンで開け放たれた大きな窓には
燦々と輝くビル群が一望出来た。

「わぁ、綺麗・・・」

私は窓から夜景を眺めると「本当に綺麗だよな」と言って
本郷さんが私の隣に立った。

「ありがとう。すごく嬉しい」

「気に入ってもらえてよかった」

彼はベッドの上に腰掛けるとポケットに入れてた物を
棚の上に置き始めた。

タバコ、ライター、携帯、定期入れ・・・・。

私はそのボロボロになった定期入れに目を留めた。

「随分と使い込んでるのね・・・。」

そう言うと彼は察したのか、「あぁ、この定期ね。学生のときから使ってる」と言った。

「替えないの?」

「そうだねぇ。そろそろ替えた方が良いかもな」と言って
彼はベッドの上に寝転がった。

彼はその状態で私の方を見ると手招きした。

私はドキドキしながら彼の方に近づいた。

私もベッドの上に腰を下ろすと彼は状態を起こして私に軽くキスをしてきた。
唇を離すと私の目を見つめてきた。

目の色が違う。

髪の色が違う。

年齢が違う。

「好きだよ」と彼は言った。

声が違う。

言語が違う。

「うん、ありがとう」

そのまま私の上に本郷さんが覆いかぶさってきた。

キスが違う。

愛が違う。

私は目をつむった。
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