Sweet Hell
BARはホテルの地下にあった。
お洒落で灯りを落とした落ち着いたBARでジャズのBGMが
大人の艶のある雰囲気を一層醸し出していた。

ゆったりとしたソファに大介さんと並んで腰掛けると
私は度数の軽いお酒を彼は、マティーニにを注文した。

他のカップルも同様にソファに腰掛けると
イチャイチャしたり、男性が女性の腰に手をかけ
くっついたりしていた。

大介さんは場をわきまえてか、私には触れず、
大股を開いて少し屈むとタバコを吸い始めた。

ジャスティン、現地の彼女が出来たんだ。
当たり前か、ハンサムだし、モテるよね。
一緒にいた金髪の女性も美人だったなぁ。
金髪の女性かぁ。でも、その方がいいかも。
私と同じ日系人の彼女だったらむしろもっとショックを受けてた。

すると大介さんがおもむろにポケットから何かを取り出しテーブルに置いた。

「これ・・・」

私がホームレスにあげた定期入れだった。

「さっきのホームレスに会って金と交換してもらった。
むしろあのホームレス、金の方が欲しがってたし」

そう言ってタバコを吹かすと、一旦灰皿に置いた。

「なんで、どうして、わざわざそんなことを」

「俺へのプレゼントだろ?」

「でも・・・」

「良いんだ。楓から貰った物の方がすごく嬉しいから」

「大介さん・・・」

「俺が渡したかったのはこれだよ。手を出して」

そう言うと彼はポケットから小さな箱を取り出し、
中から指輪を取り出すと私の薬指にはめた。

「これは・・・」

「婚約指輪。俺たち結婚しよう・・・」

「大介さん・・・」
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