Sweet Hell
「何をしてるんだろ、私。彼からのプロポーズなのに」

私はトイレの洗面台で口の中を洗っていた。

もし、ここで彼に会ってなかったら私は素直に彼からのプロポーズを受けてたに違いなかった。
彼と会っていなかったら。

ホテルのトイレの洗面台に用意されたタオルで口を拭くと
私は扉を開けトイレを出た。

ちょうどその時だった。

レストラン側からこちらに向かって歩いてくるあのカップルと出くわした。

”ねぇ、私この後ここのホテルのリラクゼーションに行きたいんだけど良い?”

”良いよ。行って来なよ”

”え?ジャスティンは?”

”俺は部屋で待ってる”

彼らは体を寄せ合い楽しそうに話しをしながら
段々とこっちに近づいてきた。

二人と目が合うとさっきの女性が
”またあの女よ”とクスッと笑って彼に言った。
ジャスティンは”気にするなよ”とクールに言うと
そのまま私の横を通り過ぎて行った。

私は何かを堪えるように目を瞑った。

***

”You are Maple, aren't you?"

「え?」

彼は、彼女をディスプレイの前に残し私に近づくとそう聞いてきた。

"Why do you knouw my name?"

私がそう尋ねると彼はゆっくりとグラサンを外した。

私は彼の顔を見て驚き言葉を失っていると
彼が"Do you remember me?"と聞いてきたので
私は「ジャスティン・カーター」と応えた。

彼は笑うと"That's right'"と応えた。

私は彼の笑顔を見てホッと胸を撫で下ろした。

"I think, you hate me, dont't you?"と彼に恐る恐る聞くと

彼はそんなことないよ!と言うように明るいトーンで
"No, I don't hate you. Do you hate me?"
と言ってきた。

”I don't hate you, too."と言うと彼は嬉しそうに喜んだ。
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